2025/04/25 17:18
YOUNのお香が作られている工房について


北海道から旅立ったものの淡路島に降り立つのも人生で初めてだった私たち。
事前に連絡をとらせていただいた工房さん何件かを巡る中で、あるひとつの工房と出会いました。
淡路島の静かな空気の中で、ひっそりと息づく日本の伝統。
その奥深く、わずか十四人しか存在しないという特別な職人、「香司」の佃さんとの出会いは、
北の地から訪れた私たちにとって、忘れがたい温かな光となりました。
香司。
それは、古からの知識と磨き抜かれた技術を一身に集め、
お香の調合から仕上げまで、その全てに責任を負う、まさに香りのスペシャリスト。
穏やかな物腰の奥には、先代からの伝統を受け継ぐ職人としての揺るぎない誇りと、
新しい世界への好奇心、挑戦する心が静かに燃えている。
初めて顔を合わせた私たちのまだ形にならない熱意にも、真摯に耳を傾け、
そっと背中を押してくれるような温かさがありました。
見学させていただいた尚林堂の工房には、
お香と真摯に向き合う人々の姿がありました。
一本一本のお香に触れる優しい手つき、
多くは語らず目の前の仕事と向き合うその真剣な眼差し。
そこには、長きにわたり受け継がれてきた、
お香への深い愛情と敬意が宿っているように感じられました。
働く皆さんの誠実な姿は、淡路島の豊かな自然と、そこで育まれてきた香りの文化そのものを表しているようでした。
時を重ね、使い込まれたからこそ宿る、深い味わい。
尚林堂の工房で目にした機械たちは、長年の営みを物語るように、
誇り高く、そして何よりも丁寧に磨き上げられ、静かに輝いていました。
その機械を操る職人たちの手は、無駄な動きが一切なく、流れるような、まるで熟練の舞を見ているようでした。
長年の経験が織りなす、滑らかで淀みのない手つき。
その動きに見惚れていると、時が経つのも忘れ、お香づくりという静謐な世界へと引き込まれていきました。
そうして、遠い北の地から来た私たちと、淡路島の香りの老舗、尚林堂は、必然のように出会いました。
互いの想いが共鳴し、手を取り合う。
それは、古き良き伝統と、新しい挑戦への熱意が結び合わさる、温かな瞬間でした。